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2018年12月

魔女のむすこたち

魔女のむすこたち』(カレル・ポラーチェク作/小野田澄子訳/岩波書店)


 裏表紙にはこんな紹介文が書いてある。

陽気な兄弟エドダントとフランチモルは、子どもたちと遠足に出かけ、夜の森に迷い込みます。山賊にとらわれ、カッパと出会い、人食い王の胃痛をなおし……。とんでもない出来事が一行を待ちうけます! チェコの奇想天外な冒険物語。

 その通りだけれど、その通りではないような……。
 エドダントとフランチモルは68歳と66歳で、それでもまだ子どもで(ちなみに母親である魔女のバーバラばあさんは150歳)、小学校に通っていないことがお役人に知られ、今さらにように学校に通い始める。遠足に行くのにバーバラばあさんのほうきを勝手に拝借し、子どもたちも一緒に乗せてあげるが、途中でほうきは壊れて森の中に落ちてしまう。山賊の家を見つけ、うまく取り入って置いてもらう。長居をしてしまい、子どもたちの親が心配しているので……と山賊のところを出たのに、なぜか人食い王のところへ。この王さま、いい人なのだが、欠点がひとつあり、人間の肉が好物なのだという。「そのほかのことにかけては、じつにいい王さまで」……いやいや、いくらほかがよくても、自分の国の人民を食べるようではダメじゃないか?
 エドダントとフランチモルは魔女のむすこなので、多少魔法が使えるものの、子どもなのでしょぼい魔法しか使えない。はちゃめちゃな展開を繰り広げ、横道に逸れたりしながらも、最後は大団円。

 わたしがカレル・ポラーチェクの名前を意識したのは、『テレジンの子どもたちから ナチスに隠れて出された雑誌『VEDEM』より』を読んだのがきっかけだった。第二次大戦中、プラハからテレジーンのゲットー(というか強制収容所というか)に移された子どもたちがテレジーンで作っていた「VEDEM」という雑誌に、ポラーチェクの「オフサイドの男たち(Muži v offsidu)」の二次創作を交代で書いていたとあった。二次創作を書けるような、誰もが知っている作品なのかと興味を持ち、調べてみたけれど、邦訳はなかった。カレル・ポラーチェクの作品の邦訳は『魔女のむすこたち』と『ぼくらはわんぱく5人組』(いずれも小野田澄子訳/岩波書店)と『ポケットのなかの東欧文学 ルネッサンスから現代まで』(成文社)に収録された「医者の見立て」(元井夏彦訳)のみ。
『魔女のむすこたち』は1969年にハードカバーが刊行され、この9月に岩波少年文庫版が刊行されたばかりだった。表紙と挿絵はヨゼフ・チャペック。表紙に見覚えが……。9月にチェコに行ったとき、プラハの書店の児童書コーナーに平積みもしくは面出しで置いてあった本ではないか!

 訳者あとがきの追記によると、ポラーチェクはテレジーンからアウシュヴィッツへ移送され、アウシュヴィッツからほかの収容所に移送される途中で亡くなったという。



11月に読んだ本

 ふとしたきっかけで、テレジーンに関する本を片っ端から読んでいます。いやあ、わたしが知らなかっただけで、けっこう出ているんですね。野村路子さんという方が何冊か書かれていて、著作以外にも監修をされたり、解説を書かれていたり、テレジーンにいた子どもたちが描いた絵の日本での展示会を実現させていたり。まったく知りませんでした。『15000人のアンネ・フランク』を読むと、野村さんがどうしてこれだけテレジーンの子どもたちの絵に惹かれたのかがよくわかります(とはいえ、正直なところ、この本よりもこの本に挟まれていた「径通信」の内容の方がインパクトが強かったのですが)。それはそうと、『テレジンの小さな画家たち』のなかで、小要塞にあるゲシュタポ刑務所をユダヤ人の強制収容所だと思い込んでいらっしゃるような記述が気になりました(『テレジンの子どもたちから―ナチスに隠れて出された雑誌『VEDEM』より』の著者・林幸子さんも最初勘違いされていましたが、間違いに気づいてあとで訂正されています)。ちなみにこの本は第41回(1994年)産経児童出版文化賞受賞作です。
 11月最後の日に読み終えた『その年、わたしは嘘をおぼえた』はとてもよかったです。ここのところ、「大人は頼りにならない」「だから、子どもしっかりせねば」みたいな本が増えてきたような気がしますが、たとえ現実がそうだとしても、児童書のなかの大人は子どもを見守り、支える存在であって欲しい。そう願います。

11月の読書メーター
読んだ本の数:21
読んだページ数:2592
ナイス数:83

その年、わたしは嘘をおぼえたその年、わたしは嘘をおぼえた感想
物語の舞台は1943年。第二次大戦中だけれど、それを忘れてしまうほど、同時代の日本とは異なる雰囲気。問題を抱えて祖父母に預けられたベティがアナベルの住む田舎の村にやってきてから、不穏な空気が漂い、それは最後まで消えなかった。田舎の恐ろしさ、正義感の怖さも感じる。アナベルを支える大人(両親、先生)の存在は児童書ならでは。
読了日:11月30日 著者:ローレン ウォーク
わたしはスター―テレジンからの生還者わたしはスター―テレジンからの生還者感想
著者はチェコスロヴァキアではなくドイツからテレジーンに送られたユダヤ人。東への移送を免れ、テレジーンで終戦を迎えた。薄い本だが、冒頭でナチスとヒトラーについて簡単に説明したあとで、著者個人のことを語るなど、資料的価値の高い本になっている。訳も読みやすい。
読了日:11月28日 著者:インゲ アウワーバッハー
テレジンの子どもたちから―ナチスに隠れて出された雑誌『VEDEM』よりテレジンの子どもたちから―ナチスに隠れて出された雑誌『VEDEM』より感想
テレジーンの強制収容所で少年たちがナチスに隠れてこっそり作っていた雑誌の一部を収録。巻末にこの雑誌に関わっていた子どもたちのその後が載っているが、ほとんどがアウシュヴィッツで亡くなっている。
読了日:11月27日 著者:林 幸子
15000人のアンネ・フランク―テレジン収容所に残された4000枚の絵15000人のアンネ・フランク―テレジン収容所に残された4000枚の絵感想
この本に挟まれていた「径通信」のジャック・エドワーズ氏と持田郁子氏の対話が何よりも印象に残った(日本で捕虜になり、その過酷な体験を生々しく綴ったエドワーズ氏の手記、今だったら刊行できただろうか?)。それはさておき、著者・野村路子氏はテレジーンにいた子どもたちが残した絵の日本での展示を実現し、それに関する本をいくつか書いているが、なぜそこまであの絵・あの子どもたちに惹きつけられたのが、この本を読んでわかったような気がする。
読了日:11月25日 著者:野村 路子
聖☆おにいさん(16) (モーニング KC)聖☆おにいさん(16) (モーニング KC)感想
イエスの弟子たちみんなでコストコに行ったら、ほとんどが12個単位なので、13人目のあの人が……で苦笑。
(あー、ローマに行きたい! ペトロ大好き。)
読了日:11月23日 著者:中村 光
黒いチェコ (フィギュール彩)黒いチェコ (フィギュール彩)感想
テレジーンに関する資料として読んだのだが、チェコスロヴァキア初代大統領トマーシュ・マサリクが何よりも印象に残った。「国家と民族は別のものである」という考えに心から共感する。そういえば『こいぬとこねこのおかしなはなし』にもマサリクの名前が出てくる。マサリクのことがもっと知りたい。
読了日:11月21日 著者:増田 幸弘
トミーが三歳になった日―ユダヤ人収容所の壁にかくされたベジュリフ・フリッタトミーが三歳になった日―ユダヤ人収容所の壁にかくされたベジュリフ・フリッタ感想
テレジーンのユダヤ人強制収容所の製図室で働いていた父親が息子に残した絵と、当時を知る人物の証言から作られた本。挿絵は父親(ベジュリフ・フリッタ)による。トミーこと、トーマス・フリッタ-ハース氏の数奇な運命には言葉を失う。生き残った人の心の傷の深さにも……。
読了日:11月20日 著者:ミース・バウハウス
絵画記録 テレジン強制収容所―アウシュヴィッツに消えた子どもたち絵画記録 テレジン強制収容所―アウシュヴィッツに消えた子どもたち感想
生き残り、画家になったヘルガ・ヴァイッソヴァーさんの絵、さすがにうまい。それはさておき、「共産党が政権を取るのだけは断固阻止!」を願う財界・地主層・軍部などの保守派が、結果的にナチスによる独裁を誕生させたのだった。
読了日:11月20日 著者:
キツネの はじめての ふゆキツネの はじめての ふゆ感想
動物の生態をさりげなく描いている。ラブストーリーといえなくもないのかな?
読了日:11月20日 著者:マリオン・デーン バウアー
せんせん感想
文字なし絵本。赤い帽子の女の子が白い氷の上に曲線を描き、スピンしたり、ジャンプしたり……。日本語版の表紙、よくできているなあ。
読了日:11月20日 著者:スージー・リー
おじいちゃんとのクリスマスおじいちゃんとのクリスマス感想
チェコでクリスマスに鯉を食べることがモチーフになった絵本。原書がスウェーデンで出ているせいか、(カレル橋っぽい橋が出ているものの)街並みがプラハっぽくないとか、男の子の名前、チェコならトマーシュとなるのでは?とか、いろいろと突っ込みどころはあります。
読了日:11月17日 著者:リタ テーンクヴィスト
キミワリーナがやってくるキミワリーナがやってくる
読了日:11月17日 著者:ベンジー・デイヴィス
クリスマスのあかり チェコのイブのできごと (世界傑作童話シリーズ)クリスマスのあかり チェコのイブのできごと (世界傑作童話シリーズ)感想
小さな男の子が経験するクリスマスイブの1日。魔法が出てくるわけでも、奇跡が起きるわけでもない。ベツレヘムのあかりで温かい気持ちになる。
読了日:11月15日 著者:レンカ・ロジノフスカー
ルイーズ・ブルジョワ 糸とクモの彫刻家ルイーズ・ブルジョワ 糸とクモの彫刻家感想
伝記絵本。
読了日:11月15日 著者:エイミー ノヴェスキー
茶色の朝茶色の朝感想
ヴィンセント・ギャロが絵を描いているので手に取ってみた。状況に向き合わず、適当に迎合して、ただやり過ごしていたことが招く恐怖……。
読了日:11月14日 著者:フランク パヴロフ,ヴィンセント ギャロ,藤本 一勇,高橋 哲哉
プラハは忘れない (母と子でみる)プラハは忘れない (母と子でみる)感想
テレジーンのこと、リディツェ村のことを思い、どんよりした気持ちになる。
読了日:11月14日 著者:
フリードル先生とテレジンの子どもたち―ナチスの収容所にのこされた4000枚の絵 (21C文庫)フリードル先生とテレジンの子どもたち―ナチスの収容所にのこされた4000枚の絵 (21C文庫)
読了日:11月11日 著者:野村 路子
テレジンの小さな画家たち―ナチスの収容所で子どもたちは4000枚の絵をのこしたテレジンの小さな画家たち―ナチスの収容所で子どもたちは4000枚の絵をのこした
読了日:11月11日 著者:野村 路子
ヒトラーと暮らした少年ヒトラーと暮らした少年感想
ちょっとしたきっかけで普通の人間が加害者になってしまう。その恐ろしさ以上に、この物語に描かれているようなことが、今現在起きていることと重なっているのが怖かった。
読了日:11月09日 著者:ジョン・ボイン
クレーンからおりなさい!!クレーンからおりなさい!!感想
最後まで読んでから、そういえば……?と思って、読みなおした。
読了日:11月06日 著者:ティベ フェルトカンプ
ふたごのうさぎふたごのうさぎ感想
作者のふたごの子ども(男の子と女の子)をモデルにというよりは、擬うさぎ化して作られた文字なし絵本。めんどりがリアルでかわいい。
読了日:11月03日 著者:ダフネ・ロウター

読書メーター

11月に観た映画

 11月に観たのは『ボヘミアン・ラプソディー』1本。午前十時の映画祭でやっていた『ソフィーの選択』も『ジャイアンツ』も結局、見送ってしまいました。
 午前十時の映画祭は来年度が最後だそうです。残念ですが、コスト的に難しいらしいので、仕方ないですね。来年度の上映作品についてのアンケートに協力しました。どんなラインナップになるか、楽しみのような……楽しみでないような……。

 

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生命の言葉——12月

20181201

 師走です。11月、短かったな……。
 気を取り直して、神社に行ってきました。今月の生命(いのち)の言葉です。

吹きすさぶ  海風に耐へし 黒松を 永年かけて 人ら育てぬ

  今上陛下御製 北海道行幸啓 襟裳岬にて、とのこと。

 おみくじは中吉でした。「嘆きや思わぬ災いに運勢は落ち込んでいますが 金運招福の神様の御神徳を受けて 高く豊かな喜びあふれる倖せを授かります 朝な夕なにお祈りし 先ず自分の心を磨きましょう」……心を磨きますよ。


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