『スーパーでかぶた』
『スーパーでかぶた』 ルイージ・マレルバ作/安藤美紀夫・福井あおい共訳
松籟社 1986.10 125ページ
"Storiette tascabili" di Luigi Malerba
Giulio Einaudi Editore, 1984
ぶたの飼育をしているアグリッポーネさんは、ある日、6本足のぶたなら生ハムを6本作れると思いつく。自然界の生き物は4本足とは限らない。木を接ぎ木して交配できるなら、ぶたと千本足のやすでの交配だってできるかもしれない……と、ひたすら妄想する。表題作「スーパーでかぶた」はこんな話だが、そのほか、地獄に落ちた(と思われる)風変わりなおじさんを心配する男の子の話、お互いに嫌い合っていることはまわりの誰もが知っているのに、表向きは友だち関係を続ける奥さんたちの話など、シュールでナンセンスな短い話が合計29作収録されている。オチはないので、読み終えたあと、置いてきぼりにされたような気分になる話も多い。
副題に「マレルバ童話集1」とある。ルイージ・マレルバは児童文学作家ではないが、子ども向けの作品をいくつか書いていて、これもそのひとつ。邦訳も児童書扱いだが、読んで楽しめるのはむしろ大人ではないだろうかという気がした。とはいえ、いろいろな子どもがいるので、こういう話が好き!という子もいるかもしれない。
共訳となっているのは、当初手がけていた福井あおいさんが急逝されたため、安藤美紀夫さんがあとを引き継いだのだと訳者あとがきにあった。その安藤さんも1990年に亡くなり、安藤さんよりも3歳年上だったマレルバも2008年に亡くなっている。
▼原書出版社の作品紹介ページ
※"Storiette"(1978)と "Storiette tascabili" の合本が入手可能
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